ないしょのかけいぼ

買い込んだガラクタや燃やしたハイオクの供養塔です

Olivetti Valentine を買って物欲に終止符を打とうとした話

もうすぐバレンタインデーですね!皆さんは今年、チョコもらえそうですか?

 

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私はそんな気配がないので、「バレンタイン」そのものを購入しました(支離滅裂)。

伝説:Olivetti Valentine

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しばらく前の記事で、伊Olivetti製のタイプライターをご紹介しました。

30508.hatenablog.com

もともと私は、現代では所有しても意味を成さないような古めかしい機械……使いにくいフィルムカメラ、いまや完全に忘れ去られたPDA、デカすぎて漬け物石にもならない黎明期のパソコンなど……に心ときめいてしまうような人間です。ハードオフで格安で拾えて、整備をした気になれて、視覚・聴覚・触覚で楽しむことができるタイプライターの存在に心深く惹かれるまで、長く時間は掛かりませんでした。

とりわけ大好きになってしまったのがOlivetti製品。デザイン史に詳しくはないですが、現代ではミッドセンチュリーとカテゴライズされる製品群を代表に、有名デザイナーたちが手がけた美しいタイプライターが、Olivettiから世に数多く送り出されました。

エットーレ・ソットサスによるStudio 45もそのうちの一機種ですが、同氏のデザインであり、タイプライターの中で(恐らく)最も有名なものが、このValentineです。

Valentineのデザイン的な素晴らしさ、価値、歴史といったものは既に国内外の多くのWebサイトや書籍で語られ尽くされていると思います。その受け売り的な知識をここでひけらかすのは恥ずかしいだけなので、詳細はそちらにお譲りします。

ただ、ジャンク品2~3,000円程度が相場の機械式タイプライターで、未だに~15,000円程度で取引されていること、MoMAに収蔵されていることなど、表面的な部分からでもなんだかタダモノじゃないなというのは感じて頂けるかと思います。

購入動機

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拾えど拾えど止まらぬタイプライター欲。
なぜかと真面目に考えたとき、その相場価格から手を出せずにいたValentineの存在が浮かびました。

「ちと高いけど、これを手にしてしまえば少しは物欲も落ち着くのでは……?」

丁度、新品時からの付属品のキャリッジ固定治具つきValentine-Sを近所で観測。
こうして、Olivetti共通取説に掲載されている4機種が揃いました。めでたし。

 

こんなんで物欲が収まるならとうの昔にオタクなんてやめてるということに、帰路で気付きました。

色んな角度から眺める

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Valentineのデザインで最も特徴的な部分のひとつがケース。
アタッシェケース的な機構のケースを採用したタイプライターが多い中で、Valentineは「バケツ」型のケースに差し込む機構。本体背面の取っ手で持ち運びも簡単です。

当時のテレビCMの録画が残されていますが、公式でまさに「バケツ」として扱われる有様。それだけ当時のタイプライターとしては奇天烈なデザインだったということが伺えます。

 

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リボンスプールはオレンジ色のプラスチックでデコレーション&カバーされ、よりポップな印象を与えます。
そんなビビッドなABS樹脂の筐体から顔を覗かせる、鈍く光るセグメント部。

堪らんですね。

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フットプリントはStudio 45とほぼ同じ。重さは段違いにValentineの方が軽いです。
現代のPCで言えば、Studio系は15.6型据置ノート、Valentineは13.3型モバイルノートみたいなモンでしょうか。

Valentineでも本機は”S”モデルなので、機構としてはタブ・キー荷重設定が省略されています。でも英文タイプ目的にはほとんど困らない仕様です。

ちょっとした整備

購入時点では「!/+」キーの戻りが悪いという症状がありましたので、解消すべく分解。

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セグメント部へのアクセスには、
①裏面のマイナスネジ4本を外し、
②キーボード手前のバーを外し(六角ネジをラジペン等で;傷つけないように)、
③キーボード上段をすべて押し込み(写真のように)、
④筐体ケースを手前に引き出す
という手順を踏みます。

見てみると、タイプバーと、打鍵時にタイプバーが収まるスキマの金具が干渉していた模様。大きく曲げ直すと却って不調になるので、じわじわとペンチで調整し、タイプバーの関節各所に油*1を吹いて終わり。

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よくアンティークショップで見かけるような、タイプバーが絡まった状態でしばらく放置されていたのでしょうか。タイプバーに負荷が掛かり続け、軸のズレを起こして干渉に至ったのかもと思っています。

整備や清掃等で一時的に持ち上げるならいいですが、ジャンクコーナーなどで見かけたら戻してあげたいものです。

ポップなタイプライターで日々に彩りを

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ということで、Valentineを買ってしまったことを自分の中で正当化するための記事でした。
正直、相場的にメッチャ安いとかいう訳でもなかったのですが、まあ部屋に並べてみると嬉しくなっちゃいましたね。

Studio 45は振動も大きいので、これからはValentine+Project Gutenbergで遊ぼうと思います。もちろん気分でStudioも使いますが。

皆様も、奥深きタイプライターの世界へ……。

*1:シリコンルブスプレーを使用しました。CRC556だとABS樹脂を侵しそう。